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drupa2016で明かされる技術提携の成果

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drupa2016がいよいよ5月31日に開幕する。2008年、2012年に続き2016年もインクジェットが大きなテーマになりそうだが、注目はハイデルベルグと富士フイルム、小森コーポレーションとランダ社などインクジェットをめぐる技術提携の行方である。

富士フイルムとの共同開発機で注目のハイデルベルグ

2014年4月、筆者はドイツ・ハイデルベルク市のハイデルベルグ本社で、同社のデジタル戦略の記者説明会「デジタル・スニーク・ピーク」に参加した。同社はすでにPOD機でリコーと、インクジェット技術で富士フイルムと技術提携を発表しており、同社のデジタル印刷戦略に大いに注目が集まっていた。
案内されたR&Dセンターでは、富士フイルムのインクジェット機「JetPress720」と、ラベル印刷機メーカー・ガルス社のインクジェットラベル機、そして「4D印刷」と称する、サッカーボールなどの立体物にインクジェットで印刷するシステムが公開された。またリコーとの共同機に関しては、「ライノプリント」の(当時)400台以上の導入実績と実機が紹介されたほか、片道7時間をかけてライノプリントのユーザー企業を案内された。
漠然と見て回った参加者もいただろうが、以上の4つの製品こそが、2年後のdrupa2016に向けて発表されることになるデジタル印刷機ブランド「fire」の骨子なのであった。すなわち、ガルスとの共同開発機が「Labelfire」、リコー機が「Versafire」、4D印刷システムが「Omnifire」、そして富士フイルムとの2年間の共同開発機が「Primefire」としてリリースされるのである。
注目のインクジェット枚葉機「Primefire」のフラッグシップ機「Primefire 106」はB1サイズの片面枚葉機で、フィーダーやデリバリーなどの機構はハイデルベルグのオフセット枚葉機と同様、インクジェットヘッドは富士フイルムのMEMS技術である。1200dpi×1200dpi、毎時2000枚だが、品質を下げれば5000枚にも達する。オフセット枚葉機トップシェアのハイデルベルグと、インクジェット枚葉機で先行する富士フイルムの技術提携の成果は、drupa2016でも最大の焦点の1つになるだろう。

ナノグラフィー技術の行方

ベニー・ランダ率いるランダ社は、drupa2012でナノグラフィー技術を発表した。液体トナー機Indigo開発に携わったランダ氏の知名度、派手なマーケティングと、一方で実機が未完成なことから、様々な意見が寄せられ、話題をさらった。ランダ社は小森コーポレーションと提携。ランダ氏は常々drupa2016で実用化されると述べており、いやがおうにも注目が集まる。
ナノグラフィー技術はインクを吐出する点ではインクジェット技術だが、数十ナノメーターサイズのナノ顔料粒子を色材として含む水性インクを数十億個、いったんブランケットに吐出する点でほかのインクジェット技術と異なる。インクが過熱したブランケットに付着して広がると、すぐに水分が蒸発し、きわめて薄いポリマー膜となる。乾燥されたイメージが紙に瞬間的に接着するという仕組みである。「Landa S10」はB1サイズ、1200dpi×1200dpiで、毎時1万3000回転とのことである。なお小森もランダ社との共同開発機「Impremia NS40」を出展する。
デジタル印刷がオフセット印刷にとって「破壊的技術」となり、オフセットメーカーが「イノベーションのジレンマ」に陥るのか、それともデジタル印刷機メーカーとの戦略的提携で切り抜けるのか、そういった角度で技術動向を追いかけることにも意義がある。

(JAGAT研究調査部 光山 忠良)

関連イベント

■drupa2016プレビュー~有力メーカー各社から印刷技術のメガトレンドをつかむ

2016年5月17日(火)13:00-17:30

各主力メーカーがB1インクジェット枚葉機、連帳IJ機、液体トナー機などの新製品の技術的革新性について解説する。


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