*現像レスプレートは開発されて十数年の歴史があり、目新しい技術ではないように思われるが、決してそうではない。技術革新が進み、耐刷力や生産性が向上して、いよいよ従来の刷版にとって代わる可能性もある。
現像レスの基本的な仕組み
これまでのCTPによる刷版は、版に塗布された感光層にレーザーを照射し感光層を硬化または溶解して(露光)、非画線部の無駄な感光層を除去し(現像)、非画線部に親水性を与えるためのガムを塗布して(ガミング)、印刷機にセットして印刷していた。しかし現像とガミングには現像液やガムといった薬品が必要であり、処理後の廃液により環境面でも不安があった。この現像とガミングの工程をなくしてしまおうというのが、いわゆる機上現像方式の完全無処理版である。
機上現像方式は版を露光後そのまま印刷機にセットし、印刷機の立ち上がり中に、感光層を湿し水でふやかし、インキのタックで剥がして、印刷損紙に転写させて除去するという画期的な方法である。損紙わずか数枚で感光層を除去してしまうため、感光層が印刷機の邪魔をすることはない。
一方、ガム洗浄方式といわれる方法もある。露光後の版をガミングする際に、ガム剤で感光層を洗い流す方法である。この工程を行うには専用のクリーニングユニットとガム剤が必要である。しかし機上現像方式とは異なり、従来のプレートと同様に画線が見え、目視検査が可能である。この「検版できる現像レスプレート」は従来通りの刷版運用が行える。
「環境対応とコスト削減はコインの表裏」という言葉があるように、現像レスプレートは環境対応だけでなくコスト削減でも大きなメリットがある。現像機の初期コストもランニングコストもいらない。現像液や洗浄水、ガムもいらない。廃液管理や現像機のメンテナンスなど現像まわりの作業工程も必要なく、人件費削減にもつながる。
小ロット化時代の新スタンダードに
これらの現像レスプレートは開発されて十数年の歴史があるが、耐刷力や生産性が向上して、いよいよ従来の刷版にとって代わる可能性がある。
特にUV印刷での耐刷性が向上したことは大きい。日本ではUV印刷機が出荷ベースで7割にも達する。最新の現像レスプレートにはUV印刷でも10万枚刷れるものもある。現在の市場は小ロット・短納期化が進んでおり、すべての仕事が現像レスでこなせる可能性がある。
油性は現像レス版で、UVは従来の版で、といった運用はこれまでもあった。しかし工場全体が現像工程をなくすことができれば、刷版の運用ルールも統一でき、現像機も現像液もまったく必要なくなり、作業効率は大幅にアップする。
小ロット化が進む中で、さらになる効率化が求められている。印刷技術の歴史は工程削減の歴史でもある。現像レスにより現像工程自体がなくなり、スタンダードの技術になるのか、注目である。
(研究調査部 光山 忠良)
関連イベント
2015年11月24日(火)14:00-17:00(受付開始:14:30より)
プレートメーカーの担当者が解説するほか、質疑応答を含めたディスカッションを行う。
各方式の基本原理から最新プレートの改良点、運用上のポイントまで学べる絶好の機会となるだろう。